独占ロングインタビュー
株式会社ROI(アールオーアイ)は、外食に特化した覆面調査サービス『ファンくる』を10年に渡り提供している会社で、3500万人の一般の消費者をモニターとして店舗に誘導し、年間60万件のレポートを飲食店に納品している、業界ナンバー1の実績ある調査会社です。
また、覆面調査を利用して、店舗の改善や人材育成を行っている外食企業の成功事例をまとめた情報サイト『フースタモニター』をフードスタジアム株式会社との協業で運営しています。
2017年7月、ROI社の創業者である恵島良太郎氏から、益子雄児氏に経営のバトンが渡されるということで、このたび本件の背景や今後の事業展開などをお二人に伺いました。
―― 改めてROI株式会社についてお聞かせください。 ――
恵島良太郎氏(以後、恵島):『ファンくる』の立ち上げは本当に辛く、不安だらけの毎日でした。28歳の私には6000万円近くの借入があり、その資金の大部分は資本政策による失敗の補填として消えていき、正味2000万円程で『ファンくる』を開発しなくてはならない状況でした。
毎週資金繰り表を更新して、いつまでに入金がなければ会社が倒産して、借金だけが残る最悪の結末をイメージしていました。
金銭的なピンチと、体験したことのない経営者としての判断の連続は、少しでも心に隙ができて逃げの姿勢になると、永遠に戻れなくなる恐怖を感じていました。そして、眠れない夜が続きました。
私は、正面から課題をとらえ、一つ一つの課題に最短で答えを出すことに集中しました。
正直、どのようにして乗り切ったかを細かく思い出すことはできないのですが、それほど目の前の課題に集中していたのだと思います。ただただ、愚直に一日一日を真剣に集中して、誰よりも多くの時間働いたことだけを覚えています。
「ファンくる」の初受注とユーザーへの初のポイントバック、「ぐるリザ」の初回申請と店舗からの承認は、その苦しさを全部忘れさせてくれる歓喜の瞬間でした。この喜びを何度も味わいたくて、1分間に1回くらい、管理画面を誰よりも頻繁に更新していましたね。
今では「ファンくる」も「ぐるリザ」も、多くのクライアント、会員、そしてROIの従業員を幸せにしてくれる存在に成長しており、とても嬉しいです。
―― 代表取締役退任と株式譲渡についてお聞かせください。 ――
恵島:従業員一人一人には、自身のライフプランをとことん突き詰めて実現して欲しい、という風土がROIにはあります。
私も今回、自分の我儘を会社に伝え、役員陣と多くの話し合いの時間を持ってきました。
その結果、会社の利益の最大化と、私のライフプランの実現を同時に満たすことのできる答えが、今回の私の退任と株式譲渡だったということです。
この答えを導き出すために、本当に長い時間をかけて話し合った、ということは強くお伝えしておきたいと思います。
経営者にはいくつかのタイプがいます。
創業期に力を発揮するタイプ、成長期に発揮するタイプ、成熟した拡大期に発揮するタイプなど。私は間違いなく、創業期に力を発揮するタイプですね。
そうすると、会社の成長期に力を発揮できる次の経営者に、しっかりとバトンを渡すことが私の使命です。
独立系ベンチャーの創業者で、これだけの実力ある役員陣を揃えて気持ちよく退任できた人を私は見たことがありませんから、そういう意味では使命を全うできたかなと思っています。
役員の皆は、これから成長期を迎えるROIにとっては、私よりもよほど必要な人材です。
一人の経営者として私を上回ってくれて有難うという気持ちと、私の個人的な我儘を受け入れてくれたことを、本当に有難く思います。
― きっかけや決め手はどのようなものだったのでしょうか? ―
初めからと言うか、極端な話をすると会社を作っている時からですね。
引退の仕方を考えていたわけではないですが、私がいなくても会社が運営でき、成長し続ける事業を作る、ということを常に意識していました。
今私はROIを含めて日本で2社、海外で8社、合計10の会社を経営していますが、ほとんどの業務を各社の責任者に任せられています。
なので、何かきっかけがあったわけではなく、最初からこの状態ができていたので、一番良いタイミングで今回の退任と株式譲渡を実行することができたと思います。
良いタイミングと言うのは、役員・従業員の成長の機会、ROIの規模感、私のライフプラン等の内的な意味だけではなく、刈田・アンド・カンパニー社という今回のパートナーと出会えたチャンスをしっかり生かすことができたという意味も含めて、あらかじめ準備ができていたのだな、と思っています。
―― 新体制についてお聞かせください。 ――
― 益子氏(新社長)に就任することになった決め手をお聞かせください。 ―
恵島:今の役員陣である、益子さん(社長就任前は営業担当役員)の営業力・チームビルディングと、綾部さん(財務担当役員)の管理・分析力と、永田さん(メディア担当役員)のマーケティング力・バランス感覚があれば、ROIの更なる成長は全く疑っていません。
しかしその中で、益子さんが最も「社長」という立場にふさわしく、そこに綾部さんと永田さんのサポートが加わることが、最も大きな成長を実現できると判断しました。
今後のROIの成長プロセスでは、役員・従業員一人一人にしっかりとした成長へのステージが用意されます。
またメイン事業である「ファンくる」の確固たる収益モデルの確立と、クライアント様からの更なる期待にも十分に応えられる、サービスの進化を確信しています。
私がこれからも顧問や社外取締役として経営に関わる、という選択肢もありました。しかし、更なる成長を確信してバトンを益子さんに渡すからには、私は今後、経営に関わるべきではありません。
その結果、私が中心となって組成するファンドから、一人の出資者としてROIを支援することを選択しました。関係が全く切れるわけではないので、内心ではホッとしています。
― 益子氏は、今後どのような会社にしていきたいですか? ―
益子雄児氏(以後、益子):今の「ファンくる」は、覆面調査で外食業界の中では日本一の位置にいると思っています。
おかげさまで現在、1000社くらいの外食企業にお取引を頂いていますが、社数で言えば日本に外食企業はまだまだありますので、まだ覆面調査をやったことがない、他社を利用していて課題を抱えている、といった外食企業様と出会えればと思っています。
今「ファンくる」には登録していただいている会員が約80万人います。今後は会員獲得プロモーションを更に強化し、直近で100万人まで増やし、さらに150万、200万人と拡大していいきます。併せて、事業提携先の合計3,500万人の会員にも、もっと頻繁に覆面調査に行って頂ける施策を考えたいですね。
「ファンくる」が納品しているレポート数は年間60万件以上。一般消費者の様々な声、つまりお店の改善点やお褒めの言葉を、日本一多く飲食店にお届けしています。更に5倍10倍の声を、お店に届けられるようにしたいです。
今も覆面調査(ミステリショッパー)と言うと、まだまだネガティブなサービスに聞こえるようで、お客様がお店に対して店に文句を言ったりダメ出しをする、と捉えている企業様が少なくありません。
こういった声を聞くと、私は、『覆面調査は、お客様に褒めて頂く為に導入するものだ』と何度でも声を大にして伝えたいと思っています。
実際、最近「ファンくる」を導入した外食企業様の多くは、「このスタッフさんに凄く良いサービスをしていただいて、快適にお店を利用させていただきました。」や「この料理が本当に美味しくて、友人と奪い合うようにいただきました。」など、お客様から実際にはなかなか聞けないポジティブなコメントを集めて、スタッフさんにしっかりと還元する為に導入いただいています。
そのお褒めの言葉を糧にして、スタッフさんが「お客様にもっと満足していただける為にこのお店で頑張ろう」と思い、平均勤続年数を長く保てていたり、新人スタッフさんにお褒めの言葉を伝えることで早期の定着を促したり、といった形で活用いただいています。もちろんお客様からご指摘のコメントを頂くこともありますが、指摘されたことを反省し、改善し、次に褒められるために頑張る一連の流れを作ることが必要で、決して「ご指摘」だけで終わらせるための覆面調査ではないのです。
次に、「ぐるリザ」ですね。
「ぐるリザ」は、飲食店に空席のある時間帯、つまり、『平日夕方や深夜の時間帯に効率よく集客したい』というお店のニーズを叶えられる“時間割クーポンサイト”として7年間サービスを行ってきました。
ここ3,4年は、「ファンくる」にリソースを集中投下し、安定的な収益が見込める状況になりましたので、今後は「ぐるリザ」を「ファンくる」と同規模のサービスにしようと考えています。
私は、「ぐるリザ」のサービスコンセプトは、飲食店にとっても利用者にとっても良いものだと思っていますので、このタイミングでもう一度「ぐるリザ」に力を入れたいと考えています。
多くの外食企業に、『覆面調査をするなら「ファンくる」、効率良く集客するなら「ぐるリザ」』と言ってもらえるような、ROIのメインとなる事業にしたいですね。
ROIは、年間で60万レポートを飲食店に納品し、5000店舗以上の調査をしている会社なので、こうした調査の数を活かすサービスができると思っています。
お客様から本当にご満足いただいているのはどの企業か、という情報を求職者に提供して、転職とかキャリア形成の判断材料にしてもらったり、覆面調査の結果の一部を一般の消費者に公開して、お店選びの参考にしていただけるような、人材募集や販売促進に繋がるようなサービスができたらと思っています。
「ファンくる」でお店を調査するだけでなく、来店したお客様の満足度を高め、次のリピート来店に繋がるきっかけになるような、お客様満足度を飲食店と二人三脚で一緒に上げていける、そういったサポート事業をはじめたいですね。
―― 恵島氏の今とこれからの活動についてお聞かせください。 ――
恵島:今後は、日本国内で2店舗運営しているストレッチ店舗事業の拡大、マレーシアでのハラル関連アプリケーション開発事業とフードビジネス事業をメインにしつつ、これらに追加して日本国内でのベンチャー企業への支援を繰り返し、シリアルアントレプレナーとして自身のビジネススキルを上げ続けていきたいと思っています。
私は、マレーシアに移住して5年経ちます。この5年の間に、いくつかワールドワイドに広げられそうなビジネスを準備してきました。
1つが『ハラルナビ』というスマートフォン向けアプリケーションです。
イスラム教の方々がイスラム教ではない国で飲食店を探す時に、ハラルに対応しているレストランを探すことが難しいという現状があります。この「ハラルナビ」なら、実名で「私、このレストラン行きましたよ!」というような口コミを見たり投稿したりすることができ、イスラム教の方々が、例えば海外旅行や留学している時にレストランを探す時に、とても役に立ちます。
現在6万ダウンロードを超えており、ユーザー数ではFacebookのリーチ数も加えて50万ユーザーが使用しているアプリになっています。
今エンジェルラウンドを終えて、2017年12月に向けて数億円の資金調達を行って、2020年のオリンピックイヤーまでに世界で利用できるアプリに育てようと思っております。
もう1つは、『ハラルコスメ』です。これもイスラム教の方々向けの、レストランではなくハラルに対応した化粧品を、実名を使って投稿する口コミサービスのとして現在作成しています。
来年の6月には資金調達を終えて、世界中で利用できるようなスマートフォン向けアプリケーションに育てて行きたいと思っております。
マレーシアがイスラム教の国であり、その中でも1番の先進国であり、尚且つ私はITのビジネスにこれまで13年間携わってきました。
この2つを掛け合わせた「ハラル×IT」の切り口で、世界中に広げられるようなアプリを作っていく、注力していこうと思っています。
もう1つ、飲食関係で、現在マレーシアで寿司屋とラーメン屋と居酒屋を1店舗ずつ運営しています。
日本食文化を海外に広げていくのは非常に面白く、やりがいを感じています。
少し手の込んだ、高級価格帯の寿司屋を2年に1店舗の出店ペースで考えており、ラーメンやカレーなどの軽食系の日本食に関しては、1年間に5店舗ずつくらい出店する計画がありますので、これらの2つの事業(ITと外食)に更に時間を費やしたいと思っております。
マレーシアに移住した5年前から、マレーシアの近隣の国をはじめとして、多くの国に視察に行ってきました。このおかげで、グローバルな視点での知見が付いたと自分自身でも思っています。
色々な国を周るのも定点観測することが凄く重要で、毎年毎年同じ国に行って、その国が1年でどういう変化をしているのかを感じます。
今世界中で食文化、IT、労働、お金がどのように流れているのかを、1年間で世界1周を毎年行い、もっと多くの情報を集めていく予定です。
元々これまでも、毎月2週間は日本で過ごして、もう2週間はマレーシアで過ごす生活を基本にしてきました。
これを、1週間が日本、2週間はマレーシア、残りの1週間は、別の国に行こうと思っています。この1週間が年間では12ヶ月あるので、12ヶ月使って少しずつ世界一周するイメージですね。できるだけ多くの国を周って、特に食文化についてですが、知見を高めて行きたいと思っています。
― 世界1周の中でどの国を周りたいというプランは決まっておりますでしょうか? ―
恵島:アメリカ(ニューヨーク、西海岸)、オーストラリア、アセアンASEANの7か国、インド、ドバイ、ヨーロッパ(東西)、というリストアップとスケジュールを立てています。
― ある程度決まっているのですね。今挙げられた国に決めた理由はありますか? ―
恵島:今私が1番知りたいのは、「今後日本で何が起きるか?」です。
やはり、日本より先に進んでいるニューヨークを見ると、日本で、今後の外食業界ではこういう動きになっていくのだな、ITでどういったものが流行っていくのだな、というのが分かってきました。
でも、そのニューヨークで流行っているものは、もっと前にヨーロッパで流行っているんです。更に、オーガニックの分野ではオーストラリアがどこよりも一番先に進んでいるのではないかなとも思っているので、オーストラリアも行きたいですね。
ASEANについては、私がマレーシアに住んでいるのもありますが、ASEAN全体の中でのマレーシアがどういった位置づけにあるのかというのを確認する為にリストに入れています。
ドバイや中国の深圳に関しては、ITを駆使した生活の最先端が見られると期待しています。
インドは、次の10年間で一番成長を遂げる国だと思っているので、必ず行きたいですね。
実は、私は今年の8月に早速ヨーロッパに行くのですが、ヨーロッパは、これまで行ったことがありません。
今いろいろと予定をお伝えしましたが、ヨーロッパに行ってみたら新しい発見が多すぎて、今後の視察予定をがらりと変えてしまうかもしれません。
しかし、そうして1年の中で視察の期間を柔軟に調整したり、自由に考える時間を多く持てるというのは、全て今回の株式譲渡と退任があったからこそです。
益子さんとROIの経営陣・従業員の頑張りと成長を信じているからこそ、私も早速日本を出て、やりたいことを存分にやらせてもらおうと思っています。
これからの生活と人生が、今とても楽しみですね。
(聞き手:市川 怜史)
カテゴリ | 求人・人材,マーケティング・リサーチ,その他 |
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会社名 | 株式会社ROI(アールオーアイ) |
所在地 | 〒162-0822 東京都新宿区下宮比町3-2 飯田橋スクエアビル2F MAP |
代表者名 | 益子 雄児 |
設立 | 2004年8月26日 |
営業日/時間 | 10:00〜19:00(平日) |
ホームページ | http://www.j-roi.com/ |
電話番号 | 03-5225-0588 ※お電話でのお問い合せの際は、「フースタ市場を見た」とお話し下さい。 |
担当者 | 益子 雄児 |